春の傷


傷跡にできた瘡蓋を何度もはがしては跡をとっておこうとするのだけど、生きている限り、皮膚はある程度再生され、しかもあとからあとからできたその後の傷に対応するのに手いっぱいになった。
けれど傷痕は内側に見え隠れする。
最近よく夢を見る。ようやく会えたね、大丈夫、ごめんね、今度こそ、と必死に抱きしめる体の重さはリアルだ。鼻先を掠める匂いも、あの子のものだ。けれどすぐに目は覚める。繰り返す。
過去に友人を亡くした時にも同じ様な夢を見た。油断すると、起きていても、もしあのときこうしていたら、というシミュレーションに取り付かれた。それはどうにもならない、取り返しがつかない、すぐ我に返る、抜け落ちる、希望。
パンドラの箱。ただし、底の開いた箱。迂闊に持ち上げてはいけない。最後に残るは、――ええ、それはただの幻想です、そうなんです、そうなんです、そうなんです…。

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