イラスト

毒性

染み渡る 化学の力は指先にまで到達する 間違いや手違いが その先へ浸透する 意識の残滓にラベルを貼る これで終わりです 無駄に満ちた全てを整頓し 間違いと手違いを 何食わぬ顔で 燃やして失くす

何もない

見ないで下さいと叫んで走って逃げたいんだ そこに一種の絶望的な快楽があるんだ 解放、そんな風にも呼ぶこともできる 刺し違える覚悟さえあれば

群をなす獣の眠り

微かな灯のような細い呼吸 目を閉じて炎を隠す 一面の暗がりだここは

冷める夢

起きない夢の熱は保温され続ける 腐敗するまで温められる

なんだ そんなことか

そんなことか そんなていどのことか といわれたら そんなていどのことなんです、ええ、 たいへんもうしわけありません よけいなじかんばかりとらせましたね はは そんなていどのことだったんです と答えざるを得なくて わたしがわらうと あなたもわらうから …

マサニエロ

城のすすきの波の上には 伊太利亜製の空間がある そこで烏の群が踊る 白雲母〔しろうんも〕のくもの幾きれ (濠と橄欖天蠶絨〔かんらんびらうど〕、杉) ぐみの木かそんなにひかってゆするもの 七つの銀のすすきの穂 (お城の下の桐畑でも、ゆれてゐるゆれてゐ…

混ざらない

融合からかけ離れた性質のわたしたちは

かわいそうにかわいそうに

ことばだけで頭を撫でるひと ことばだけで根っこは切れてる 茎だけを握り締めている 花も葉も無く 茎だって あるかすらわからない 何も無いところを 私も撫でるふりをする

一人

正解は常に変動するとも知っていて 正解は大概胡乱なものだとも知っていて だからあなたは わたしは 一人と一人を保ち過ぎる

嘘をつきたくない

という嘘に いつまで どこまで お付き合い頂けるんでしょうかねえ

sincerely yours

雪が降るかもしれないですよ と伝えるようなことはしない 雪が降るかもしれないですよ と 伝えたくなるような そんな感傷は 多分 ない ことに なっているべきで そうでしょう(そうなのでしょう?)

marginal

足の踏み場も無い

cell

小さくなって小さな声で聞こえない様に小さく小さくばかみたいに、

名前を付けないこと、

それだけを、取り敢えず、約束を、しましょうか

夢を見る夢を見る夢を見る

もうおなかがいっぱいです 破れます 壊れます

美しい針を見た

約束します きっと いつか全て忘れますね 少なくとも 忘れる努力はしますね

最早正気の沙汰では無いから

まるでずっと正しかったように まるで真実を 意を決して口にするように 嘘ばかり嘘ばかりうそ、ってなんですか 嘘は嫌いです 嘘の定義が解らないから

最後に残った

か細い 糸のような ぷつりと 音をたてて

消える日の水の流れを見てる

無くなりました の 証明は難しい

いつまでも絶える事無く

不連続面で会うと口約束をした 多分もう会わない

merry go round

あの安っぽい派手さにくるまれた 一種いかがわしい乗り物がとても苦手なんです 私の内側にある感情とてんで一致しないんです 神経を逆なでするのです 何がmerryだ と憤慨する気力も無く 誰か 私以外の誰かが この乗り物らしきものを 行き先の見えぬ回転を 私…

凍る血

あのとき

いったいどうするのが てきせつで ただしくて まちがいじゃなかったのでしょう

雑な夢

砕かれたプラスティックの手触りの ひどくチープな夢を見る 水に溶けない夢を見る

夢に見る

絶望が粉々になってそこらじゅうに落ちているので その破片をなるべく避ける 一生懸命に撫でた温かさの記憶、温かさが抜け落ちてゆく記憶、 気付けば目が覚めているけれど 眠るんじゃなかったと思う

昔ここには道があった筈ですが いまはもう ゆくえがしれません

合間に

否定も肯定もせず沈黙を以て 私ではない人の声が辿る私という形の そのどれでもないのですと 狼煙で意思を伝えるが如き 面倒な手順を今日も

隘路

手始めに 木を一本植えよう そしていつか根を張り枝を伸ばして 大地はそれを密かに隠すだろう 跡形もなく分解してしまうだろう

弱っている 横たわり 火の手を見て 火の粉に触れて 何も見えなくなるまで見送って 小さな音をたてて去っていって 音が聞こえない 解さない私の為に

ひねもす

灰色の感触 ぎちぎちと 腐敗する甘さ