イラスト

ra

既にファイル名を「ra」にしてしまうほどの体たらくだったのでタイトルも「ra」です

末路に告ぐ

断罪される胸の内 (もうみんな鍬や縄をもち 崖をおりてきていゝころだ) 何もないところを掘り返し (もうみんな鍬や縄をもち) 繰り返す墨の様な夜 滲む掌 走る声 たなびく無感情のほつれを見る 私のものではないかの様に

秘密

新月にも月は在るのだそうで

思えば

自ら選択したようで 義務感でそうしたようでいて そのどちらでもない日々でした 過去形で語るほどの丸みも無い 棘を踏み砕く作業の渦中にあり 大量の雨が押し流すのを待つばかり

条件付き

良き日

さてこの灯を次に人の子になる子にあげよう これは篝火だ 松明だ 地獄の業火だ 人の子よ

選択した日

同じ名前を繰り返し何べんも繰り返し 内腑を蝕む火を繰り返し聞いて聞いて はぜる音が夜に散るまで 名前が砕け散るまで 指先が音になるまで

雨上がり

嬉しいのか悲しいのかどうでもいいのか

赤い月

厳密にはチェダーチーズのようなオレンジで、でかかった 平素の色味に対して「赤い」という感想なのだろうと思う 珍妙なでかい丸が、ところどころ雲に隠れて見えない夜空の下 川面ではアオサギが所在無さげに立っていた 脚が細くて体はこんもりとしていて あ…

呼吸の数

繰り返し何べんも息を吸い吐くという作業に付随するのが生きるという事です 生きる意味が云々というのは本当にどうでもよくて そんなもの最初から用意されてないから それらしきものを各自で勝手に探すのが生きるという事です 膨大な自由行動タイムが染み渡…

可哀そうな螺旋引き

弧を描く事に疲れたのですが 実に怠惰であったので 何も問題ではありませんでした

この夜を生き延びる術を教えよ

各種まじないのたぐいの存在の有無はさておき

川沿いの花

薄紙みたいな花が風に揺れて 川は川で一段とプリッとして見える水鳥がわらわらといて 眠る前はしとしとしてたのが消え失せててまるで5月。すごく5月。

僕はもう家にも月にも帰りたくない

今日はまた、悪い事と良い事があった様な気がしたけど 悪い事よりも、良い事――あくまで私個人において――が、恐らく二度と起こらないような、信じがたいような、いや、決して信用ならない罠にしか見えないような良い事であったので、すこぶる晴れたこんな日に…

消したり足したり

やっぱり気に食わないのだけど 結局腹立たしいのだけど といいつつも許してしまう ということもなく 許すふりで一先ず一旦取り敢えず

夜盗

目を閉じれば消え失せる 手品みたいに 目を開ければ もっと 消える

どうしてそんなに

直線ではないものばかりで溢れかえっているのでしょう 曲線ならば正しいということもないのでしょうが

知っている

、と、あなたがいうたびに、 あなたが知っているという そういうわたしであったらいいのにと 私ではない そういうひとをさがしてくださいと 何なら 電柱に貼り紙でもしましょうか という気分になる けれど あなたのいう私というものが 私である可能性に賭け…

春の傷

傷跡にできた瘡蓋を何度もはがしては跡をとっておこうとするのだけど、生きている限り、皮膚はある程度再生され、しかもあとからあとからできたその後の傷に対応するのに手いっぱいになった。 けれど傷痕は内側に見え隠れする。 最近よく夢を見る。ようやく…

影絵

影ばかり見て本体を見ていないというけれど 影は本体からしか生えていないし 影を見ていれば大体の本体の事はわからなくもなく というかそれ以前に 本体を幾ら真剣に見たところで 胡散臭い微笑みとか言葉とか 全部全部見苦しいのですけど 見なきゃいけません…

できたらでいいんだ

もう少しゆっくり歩いてくれるかい 少しばかり疲れているみたいだ 自分のことに「みたいだ」というのもおかしな話だね でも「みたいだ」というのがとてもこの感覚らしいので 君には正直に話そう (君は信じていないようだが) (耳を傾けるふりをしているよ…

帰らない

空を見る様に私を見るのですね 空は変化します 私も変化します とどまりません 何処かへ行きます おなじものでできていても もう 帰りません そう知っていてまたあなたは

END

無駄な宴はこれまでにしましょう 怠惰が理由ではなく お開きになるのはそれは 私達の努力が足りなかったからでしょう あなたがそう言うのなら そうなのでしょう

最初の夜

何の問題も無い のっぺりとした直線の夜を 等間隔で歩くように 気を付ける事も無く 気を遣う事も無く 転ぶ事を恐れない日があった それは揺るがない事実であり それは薄れゆく 確実に滅亡する一個人の記憶である

みらい

いつかきっと会えなくなるひとの名前を いつしかもう覚えていない名前を それぞれ同じ様に土に埋めて埋めて 発芽する種子もあれば 奥深くまで侵食する毒もある 等しい未来は水を撒く 未来は日々水になる お陰で辺り一帯大海原だ 深海魚になる目が潰れる

宵越しの

私に向けて吐き出された言葉は熱を帯びていて きっと熱いのでしょうね、と予想する 絶対の壁の向こう側 貴方の顔も知りません かわりにわたしはずっと壁を見ていますし 膝を擦り指を痛めて 苦労の末に壁を越えて貴方に会っても そんないかがわしい悲しみに溺…

胡乱な輩

信じません 信じません 言葉の裏に真意が吠えることもないので 窪んだ瞳に それらの言葉は火の様に映るので 遠吠えを聞いては あれは何かしらと あなたの顔を見ることもなく囀るのです けものの耳を持たぬ私は

対立する個

ようやく二人きりになれましたね 私と 私の 干乾びた言葉ばかり発しては まるで植物の細い茎の様に ゆらゆらと花を支えているふりをするほうと それを許さぬ種子が いがみ合うこともなく ただお互いを見放してしまう事で安定する そんな二人きりの暗がり

騙されるなよ

忠告はした だから これからも本当のことは話さない 騙されるなよ この想いだけが 貴方に対する忠実だ

それは私の与り知らぬことでして

あなたの内側の事件を 私が名付けることは出来かねるのです あなたの思うあなたの事件は あくまであなたの管轄下にあり 私が侵入する隙なんて無いのでしょうから 至って平和に あなたの事件を 私の視界から外させて頂きたく